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第5章 食べる脳をつくる — 1日3回の脳メンテナンス
14時のあなたを、つくっているのは、12時のランチである
平日、14時の会議に出ているあなた。
頭がぼんやりして、議論についていくのに必死で、気がつくと隣の人の発言を聞き逃している。
カフェイン缶コーヒーを手に取って、なんとか終了時刻まで耐える。
このとき、何が起きているのか。
もっとも有力な犯人は、2時間前のランチです。
12時に食べた、丼ものや、麺類、菓子パン、コンビニのおにぎり。
これらに共通しているのは、糖質中心の食事である、ということです。
食後、血糖値が急上昇し、これに対応してインスリンが大量に分泌され、血糖値が今度は急降下する。
この乱高下のあいだに、脳のエネルギー供給が不安定になり、判断力、集中力、感情の安定がぜんぶ揺らぎます。
14時の眠気は、年齢のせいでも、気合いの問題でもありません。
血糖値の動きという、ごく物理的な現象です。
そして、これは、12時のランチの選び方ひとつで、ほぼ完全に防げます。
あなたの脳のコンディションは、あなたの日々の選択でつくられている。
そして、食事は、日々の選択の中で、もっとも頻度が高く、もっとも軽視されている領域です。
脳は、全身でいちばん「燃費が悪い」エンジン
人間の脳は、体重比でわずか2%程度の臓器です。
ところが、全身が摂取するエネルギーの約20%を消費します。
これは、車にたとえると、極めて燃費の悪い、しかし極めて高性能のエンジンに相当します。
止めることはできず、燃料を切らせばすぐ機能不全に陥り、しかも燃料の質に対して敏感です。
1日3回の脳メンテナンス
本書では、毎食を「脳のメンテナンス時間」として再定義することを提案します。
朝食、昼食、夕食、それぞれに、脳のために果たしてほしい役割があります。
朝食 — 「起動の食事」
朝食の役割は、夜のあいだに使われた脳の燃料をリチャージし、午前中の前頭前野を起動することです。
ここで決定的に効くのが、タンパク質ファーストです。
具体的には、卵、ヨーグルト、納豆、豆腐、肉(ハム・ベーコンも可)、魚、プロテイン。
これらを、コーヒーや菓子パンより先に、口に入れる。
たったこれだけで、午前中の脳が変わります。
昼食 — 「持続の食事」
昼食の役割は、午後の脳のパフォーマンスを、急落させずに持続させることです。
理想は、3つの要素を1食の中に揃えることです。
- タンパク質(肉、魚、卵、豆類)
- 食物繊維(野菜、海藻、きのこ、雑穀)
- 良質な脂質(オリーブオイル、ナッツ、青魚)
これらが揃った食事は、血糖値の動きを緩やかにし、午後5時まで脳のパフォーマンスを保ちます。
夕食 — 「回復の食事」
夕食の役割は、その日の脳の疲労を回復させ、夜の睡眠を深くする準備です。
ここでもっとも気をつけたいのは、時間と量です。
就寝3時間前以降の夕食は、消化が睡眠と競合し、睡眠の質を確実に下げます。
量が多すぎると、消化に血流が回り、脳の修復に十分なエネルギーが回りません。
遅い夕食、量の多い夕食は、翌朝の脳のコンディションに、まっすぐ跳ね返ります。
そして、夕食の内容として推奨されるのが、地中海食型の食事です。
野菜、魚、オリーブオイル、ナッツ、全粒穀物が中心の食事パターンで、認知機能の維持と、心血管疾患・うつのリスク低下が、複数の大規模研究で報告されています。
腸と脳は、つながっている
近年、もっとも面白い領域として研究が進んでいるのが、腸脳相関(gut-brain axis)です。
人間の腸には、約100兆個の腸内細菌が住んでいます。これらの細菌は、私たちが食べたものを分解するだけでなく、神経伝達物質の原料を作り、迷走神経を通じて脳に直接シグナルを送っています。
驚くべきことに、人間の体内のセロトニン(幸福ホルモン)の約9割は、脳ではなく、腸で作られています。
腸内環境が荒れていると、その人の気分、思考、ストレス耐性が、まっすぐ影響を受けます。
腸内環境を整える基本は、シンプルです。
- 食物繊維を多く摂る(野菜、海藻、きのこ、全粒穀物)
- 発酵食品を毎日摂る(納豆、味噌、ヨーグルト、ぬか漬け)
- 超加工食品と人工甘味料を減らす
- ゆっくりよく噛む
カフェイン、糖、アルコールの正しい付き合い方
カフェイン
カフェインは、脳の集中力を上げる強力な物質です。問題は、タイミングです。
朝起きた直後の体内では、コルチゾールという覚醒ホルモンが自然に高まっています。
このタイミングでカフェインを摂ると、効きが鈍く、その後の依存度だけが高まります。
起床後90分以上経ってから摂るのが、効果的とされています。
また、カフェインの半減期は約6時間。15時以降に摂ると、その夜の睡眠の質をはっきり下げます。
14時までに最後の1杯。これだけで、夜の眠りが変わります。
糖
糖を摂るなら、果物や、自然な甘味のあるものから。
チョコレートを食べたいなら、カカオ含有率の高いもの(70%以上)。
アルコール
アルコールは、睡眠の質を確実に下げます。
入眠は早くなりますが、その後の深い眠りが浅くなり、レム睡眠が減ります。
「毎日の晚酌」を、「週末だけのお楽しみ」に変えるだけで、人生の脳のパフォーマンスは、別物になります。
食事を「コスト」ではなく「投資」と捉え直す
食事は、コストではありません。
脳の資本に対する、毎日3回の積立投資です。
50歳から食事を変えはじめた人と、20歳から不摂生を続けた人。
60歳になったとき、脳の状態は、必ずしも前者が劣るとは限りません。
食事の改善は、想像以上に、早く、脳に効きます。
この章のまとめ
脳は、全身のエネルギーの20%を使う、高性能で燃費の悪いエンジンです。
1日3回の食事を、「脳のメンテナンス」として再設計してください。
- 朝食: タンパク質ファーストで、午前中を起動する
- 昼食: タンパク質+食物繊維+脂質で、午後を持続させる
- 夕食: 早めに、軽めに、地中海食〜和食寄りで、回復を準備する
次の最終章では、ここまでの個別のtipsを統合し、ひとつの設計図にする話に移ります。
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